〜ユーロスターの終着駅〜
セント・パンクラス駅(ロンドン)
 ロンドンのセント・パンクラス駅は、ゴシック調のレンガ建物と列車を覆う大屋根を特徴とする。全ての線路をスッポリと覆う錬鉄製アーチ屋根は、幅が約73mもあり、1868年に駅が開業した時には、世界最大規模のスパンであった。
この大屋根を実現するために、バーローという設計者は、設計に先立て、18分の1の縮尺の模型を作って実験をしている。
 アーチ構造の弓なり状の部分は、三角形に部材を組んだラチスという構造で、両端は水平に張られた弦で結ばれ、この上に在来線のホームがある。全部で24個あるアーチは、約9mの間隔で線路の方向に設置され、屋根の全長は200mを超える。 
 この歴史的な鉄道駅に大改造が加えられて、ユーロスターの発着駅の役割が追加された。国際ターミナルの工事が完成したのは、2007年11月であるが、これ以前には、英仏海峡を渡ってイギリスに入ったユーロスターは、在来線の軌道を通ってロンドンまで達し、終着駅はテムズ南岸のウォータール駅であった。
この在来線に代わり、新たに建設された高速鉄道路線は、時速300kmの運行ができる緩いカーブで、ロンドンに近づくと地下にもぐり、新たな国際ターミナルのセント・パンクラス駅に到着する。
 ロンドンの多くの鉄道駅は、方向ごとにそれぞれ別々の終着駅として、19世紀の中頃以降に相次いで建設された。1世紀半以上を経た現在も、ほとんどが補修や改造が行われながら使われ続けている。これらの中には、セント・パンクラス駅のように、時代の要請で改造が加えられたものも多いが、決してスクラップ&ビルドではない。過去に建設されたものを前提として足し算で、新たな機能を加える方法である。
 セント・パンクラス駅の国際ターミナルから出発するユーロスターに乗ると、パリまで2時間15分で到着する。